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三足の草鞋:ロータリー留学のたまもの

三足の草鞋:ロータリー留学のたまもの

投稿日: 2025-05-17学友インタビュー(山静学友会)

TT(1993-1994年度・国際親善奨学生)

1 自己紹介をお願いします

 1993-1994年 国際親善留学生としてカリフォルニア州のサンノゼ州立大学に留学し、グラフィックデザインを専攻しました。

 留学中は、絵やデザイン、写真、印刷技術を学ぶなど、私にはわくわくすることばかりでした。私が目指していたGraphic Design Majorに進むには初級クラス履修後、それまでの課題を集めて提出する、ポートフォリオレビューというものをパスする必要がありました。この発表を待つときほど緊張したことはなく、またパスの知らせを受けたときほど嬉しかったことはありません。Graphic Design MajorにパスするとIllustration emphasisかDesign emphasisどちらか希望の進路を選びます。私は迷わずIllustration emphasisを選択しました。

 今イラストを描くことはほとんどなく、デザインを仕事にしていることを考えるとこの選択が正しかったのかわかりません。実際のところ、すぐに壁を感じて、そこから先は苦悩の連続でした。新刊を読んで表紙イラストを描くという課題も、読むのが遅い私には厳しい課題で苦労しました。どうしても読むのが間に合わず、途中までの解釈で作品を仕上げた苦い思い出もあります。しかし、そこで出会った友と、自分のスタイルを確立しなければという焦りや才能が無いのではという苦悩を分かち合ったことは、私にとってかけがえのない宝物です。

San Jose Rhinos Illustration
学生時代のイラスト:ホッケーチーム San Jose Rhinos用

 留学中の大きな出会いとしてインターンシップがありました。ローカリゼーションの会社のDTP部門で各言語を担当する人たちが集まっていたので、国際色豊かで、とても穏やかで和やかな職場でした。そこでいくつか失敗して印刷データ作成の怖さも味わいながらも、親切に教えていただき、経験を積ませていただきました。また、日本に帰るなら紹介状を送っておいたからと日本の同業会社も紹介していただきました。日本に帰国後もこの経験を活かし、紹介された会社で就職しました。

 結婚・出産後はフリーランスとして活動しながら、留学時代のご縁で海外企業の日本子会社の立ち上げメンバーに参加し、新しいチャレンジを楽しみましたが、パンデミックを機に退職しました。その後、デザイン業務を再開しつつ、経理関係の資格を取得したところ留学時代のご縁で再度会社の立ち上げに誘っていただき、一方で最初の会社のご縁で業務委託をいただいて、以来三足の草鞋を履きながら、これまでのキャリアを基に様々な業務を行なっています。

2 現在の仕事や取り組んでいる事柄は?

 現在、一人会社を設立し、デザイン、バックオフィス、プロジェクトマネジメントなどの業務を請け負っています。主に紹介を通じて、中小企業のさまざまな業務に携わっています。基本的に限られた範囲のお客様と長期にわたって関係を続けています。三足の草鞋に共通して言えるのは、すべてロータリーに支援していただいた留学が発端になっていることです。

3 ロータリファミリーに参加したきっかけは?

 幼少期から絵を描くことやデザインに関心がありましたが、美大への進学には違和感を覚えていました。洋楽への興味から英語を習得したいと思い、市の交換留学プログラムに応募しました。高校2年生の夏休みにホストとして留学生を受け入れ、翌年は受験生ながら姉妹都市であるサンフランシスコベイエリアで1ヶ月のホームステイを経験しました。この際訪問したCommunity Collegeへの留学を決意し、ホストファミリーとの2年間のホームステイの約束も取り付けました。日本の短期大学と米国のCommunity Collegeを合わせて4年間で卒業する計画を実現したものの、次第に米国のUniversityで学びたいとの想いが強まり、ロータリーの国際親善奨学生に応募しました。

 編入手続きはインターネットが普及していない時代のため、Community Collegeの恩師に頼りつつ成績証明書の準備や大学の編入願書の手続きを行いました。その結果、希望していたSan Jose State Universityの3年次に編入が決まり、同時にロータリー国際親善奨学生として派遣させていただけることになりました。

 学友会との出会いは、奨学生として派遣いただく前に参加したのが最初でした。帰国したばかりの先輩奨学生のお話があまりに面白くて夜中まで興奮してしゃべった記憶があります。また、帰国後、報告のため学友会に参加した際、当時の幹事さんより実家の印刷会社に会誌作成のご依頼をいただき、一昨年紙面による発行が終了するまでの長きにわたり実家ともども大変お世話になりました。私自身も会誌のレイアウトや名簿作成に携わった巻もあり、多くの優秀な学友の活躍や、優れた人格のロータリアンの方々の寄稿文を拝見し、その一部に関与できることを光栄に思いました。

学生時代のイラスト
学生時代のイラスト

4 ロータリーに関わったことを現在どのように思っていますか?

 様々なジャンルの職業で活躍され、素晴らしい人格を持ったロータリアンや奨学生の方々と交流する機会を得たことで、自分自身も運命に与えられた仕事に精一杯取り組んでいこうという意欲が湧きました。

 また、留学を通じて、自分が日本人であることを強く実感するようになりました。カリフォルニアの乾いた空気や青空、レンガ色に広がる大地に憧れを抱き、留学中はその風景やその風景そのままの明るく率直な人々との交流を心から楽しみました。しかし、日本に帰国した際、日本の国土の美しさに打たれ、新幹線に乗っている間、窓外の景色から目が離せなかったことが強く印象に残っています。その後改めて日本の歴史や神話に興味を持って調べるようになり、日本に生まれたことを誇りに思うようになりました。これらの経験から、仕事や与えられた様々な機会を通じて、日本に貢献したいと思うようになりました。

5 これからの夢や目標は?

 来るすべての仕事に全力で取り組みたいです。様々な会社の様々なジャンルの仕事を並行して行うことが自分には合っているように感じています。特に定年も設けていないので、力尽きる日まで、運命が与える仕事に正面から全力でぶつかっていきたいと思います。そして、それが少しでも将来の日本のためになれば嬉しいと考えています。