投稿日: 2025-04-26学友インタビュー(山静学友会)
和田 直樹(2009-2010年度国際親善奨学生)
和田 直樹(2009-2010年度国際親善奨学生)
2009-10年に英国のブライトンにあるInstitute of Development Studiesに留学をしました和田直樹です。今は横浜で妻と子育てに奮闘中です。昨年(2024年)5月に3人目の娘が生まれ、3姉妹になりました。末娘が4月から保育園に通い出しましたが、幸い3姉妹同じ保育園に通うことができ、保育園では9年目の大ベテランになってしまいました。最近は、上2人の娘の習い事の送り迎えに練習、久しぶりのおむつ替えに日々の食事の準備などなど、本当にジェットコースター状態ですがにぎやかな生活を精一杯楽しんでいます。
また、仕事の面では学生時代から環境問題に取り組み、現在は現在も国内外の環境問題に政策面から取り組んでいます。毎年毎年夏の暑さが厳しくなっていく中で、今育てている子供たちの時代にはどうなってしまうのだろうというのは本当に死活問題ではないかと感じています。自分たちの世代が様々な意味での豊かさを享受できていることを考えながら、将来世代のため切り替えをしていくことに少しでも力になれればと思っています。
留学後は、古巣の大学で博士課程まで進学し、その後役所に入省しました。現在13年目ですが、現在は役所は一時研究休職という扱いで、人事交流の一環で某私立大学で環境政策を教えるということをしています。
大学での仕事は大きくは2つあると感じています。一つは教育です。今の私の専門は環境行政ということで、環境政策についての講義を行っています。改めて教えるとなると、これまで実務で行ってきたことの背景や社会の動きを改めて調べなおすのですが、むしろ自分の勉強になることも多く大変貴重な期間だなということを感じます。また、現在教えている学生は非常にアグレッシブな学生が多く起業や社会問題への監視も高く、すでに社会の様々なつながりを持って活動をしている子たちがたくさんいます。自分が学生だったころとはまた大きく違う雰囲気で、多くの刺激をもらっています。教育といいつつ、むしろ自分の教育のようですが、学生には少しでも環境問題の正しい理解と、自分たちの行動で将来を変えられるという実感を持ってもらいたいと思っています。
もう一つは、大学の教員として大学自身のサステナビリティの向上です。今いる大学のキャンパスは、日々4~5000人が通うキャンパスですが、それだけエネルギーの消費や食、ゴミの問題など多様な環境への負荷を生じさせている場でもあります。キャンパスとしてのカーボンニュートラルの実現に向けてまさに取り組んでいるところです。
また、同時に私が運営する研究会ではキャンパスを舞台にサステナビリティの向上のための様々な取り組みを学生と一緒にさせてもらっています。行動変容のためのインセンティブ設計や、学内の様々な方と連携した取り組み、学生自身が主体となって実施する活動など、教育と実務を兼ねた様々な取り組みを通じて、キャンパスの持続可能性向上と学生の経験値の獲得を目指して活動をしています。
ロータリーとの関わりは、先にふれた2009年のイギリス留学が最初でした。当時私は大学で途上国の環境問題を専門に扱っておりましたが、環境については大学のコースで多くを学ぶことができましたが開発についてはよく理解できていないと感じていました。そこで開発の問題を学べるところとしてイギリスに留学をしたいと感じている際に、母がロータリーの奨学金のことを教えてくれました。確か申し込み締め切りの一週間前で、徹夜で申請書を書き上げた記憶があります。その甲斐あってか、無事に国際親善奨学生として選定をいただき、イギリスに留学をさせていただきました。
留学については、行く前から滞在中を通して、ロータリーの皆様には大変お世話になりました。静岡中央RCから推薦をいただき、ホストしていただいた齋藤さんには出国前にお寿司をごちそうしてもらったことをよく覚えています。今でもあの時を超えるウニ軍艦には出会っていません(笑)。滞在中は、現地のホストロータリアンであるDavid Lowe氏には本当にお世話になりました。多くのクラブを回らせていただき、またことあるごとにご自宅にも招待をいただきました。これもご飯の話ですが英国に到着した夜にご自宅でいただいたプディングもよく覚えています。ベリーがたっぷり入っていてこれでもかというくらいお腹にたまる、“らしい”プディングでした。
そして、実はこのつながりはその留学だけでは終わらず、2021年には職場の研修制度を通じてもう一度当時いたIDSに、今度はVisiting Fellowという形で1年間研究をさせていただきました。10年前は単身でしたが、今度は家族4人で渡航し、大変貴重な経験をさせていただきました。当時お世話になったDavidとその奥様のPaulineにもお会いして、楽しい時間を過ごしました。子供たちは小学校と幼稚園にそれぞれ通い、親を圧倒的に超える英語の成長力を見せてくれました。本当にありがたいご縁をいただいたことに感謝しています。
留学をさせていただいたことは、人生の大きな転機だったと感じており、その機会をいただいたことに本当に感謝をしています。端的には、留学を通じて現地で出会った方々の影響が、帰国後に現在の職につく直接的なきっかけとなりました。
また、もう一つは滞在中にDavid氏より聞いたロータリーの目指す言葉で、記憶が少しあいまいなのですが、「For a better world than the one you were born into」というような趣旨の言葉がありました。検索しても同じような言葉が出てこないので、もしかするとDavid氏自身の言葉なのかもしれません。環境問題で自分が社会にどれだけの影響を与えられるのかということを考えるとき、正直それほどのことはできないだろうなという思いがある一方で、この言葉を通じてこれまで同じような思いをもとに実際に行動をしてきた多くの方がいるんだ、ということを感じることができたことは現在の自分の大きな支えの一つになっていると思います。
正直、今この瞬間は子育てと仕事でいっぱいいっぱいというのが実際のところです。30代前半までのある程度仕事に打ち込めた環境が本当にうらやましいというかありがたかったというか。しばらくは何とかこの両立を目指して走り続けていきたいと思っています。
長期的な目標は、やはり環境の分野で少しでも世の中を変えていきたいです。そのためにはまずは足元、大学での変革に少しでも寄与していければと思います。実際初めて見ると本当に組織を動かすということの大変さを改めて実感します。他方で、学生と話していると物事を本当にラディカルに、正面から、そうだよね、という意見を言ってきます。なぜ変われないのかと問われると非常に答えに詰まる場面もあるのですが、他人が関わるものが変えるというのはそれだけ大変な作業だということだと思います。役人の人事は目まぐるしく、数年で今の職場も変わりまた外の人に戻ってしまうのですが、まずは着実にできる変化を起こしていきたいと思います。