投稿日: 2025-05-15エッセイ(山静学友会)
岩本 弘光(1988-1989年度・国際親善奨学生)
予期せぬことに山静学友会会長を仰せつかりました岩本弘光と申します。1988-89年度RI国際親善奨学生としてミラノ工科大学に留学させていただきました。この場をお借りして2620地区ロータリアンの皆様に深く感謝申し上げます。帰国後は山静学友会代表幹事を2年間務め、2020年には2750地区東京西RC会員になりました。そのようなわけで現在は2620地区と2750地区にまたがる二足の草鞋を履いております。
履いてみるのは二足の草鞋で、心配をよそに大事な「気付き」や楽しい「出会い」がありました。久しぶりに山静学友会に顔を出してみると、学友が少なくなっていることに気付いて心を痛めました。新しい奨学生がおらずこのままでは山静学友会が消滅するのは明白でした。原因を調べてみると2012-13年度に奨学金プログラムが「国際親善奨学生」から、7つの重点分野に特化した「グローバル奨学生」に変更されたことにありました(参照:図-RI奨学金プログラムの変更)。他方、「地区補助金」を利用してあらゆる分野の奨学生(以下、DG奨学生)を支援できますが、当地区では見過ごされてきました。
話は変わりますが、山静学友会の理念は「未来志向」です。学友が親睦交流する同窓会としての役割や地域奉仕に止まらず、ロータリー精神を基軸にした活動を考え、見出し、実行していきます。先に奨学生が減少したとお話ししましたが、これは単にロータリーの問題ではなく、我が国の未来を背負うリーダーとなるべき若者の育成がおろそかになっているのではないでしょうか。そこで全国の学友会を組織する日本ロータリー学友会(以下、日本学友会)と共に全国34地区を対象にした「アンケート」を配布して、2024年1月に「DG奨学生」の実態調査をしました。アンケートの結果、「DG奨学生」を送りだしたのは、全国34地区のうち半数以下の16地区に止まっていました(参照:DG奨学生を支援した地区)。
「国際親善奨学生」時代の奨学生数は全国年間年平均131名でしたが、2013-14年以降は56名となり43%まで減少していました(参照:RI奨学生数の変化)。
また、日本人留学生と米山留学生を比べてみますと、2023-24年度の日本人留学生は62名で、米山留学生900名と比べてわずか6.8%に止まっており、留学生の入出格差が顕著でした(参照:日本人奨学生と米山奨学生の比較)。
アンケート結果は、2024年11月9日に開催された日本学友会全国大会総会(東京海洋大学)で報告され、参加者76名によるディスカッションをへて、「日本や世界の未来を担う意欲ある日本の若者に、グローバル補助金の7つの重点分野に限らず、地区補助金を利用して、他のあらゆる分野を学ぶための奨学金を与えて欲しい!」を主旨とする「提言」を採択しました(添付PDFでご覧いただけます)。その後、「提言」は日本学友会の総意として、RI日本事務局財団室やRRFC各位を通じて各地区ガバナーに届けられました。本誌面をお借りして山静学友会の活動の一端をご報告させていただきました。
次にもう一足の草鞋である2750地区の活動についてです。2750地区は日本有数の大所帯でありながら、2013-14年以降「DG奨学生」を送り出していません。そこで「提言」を2750地区役員に説明して「DG奨学生」支援を要請したところ、さっそく募集準備に着手していただきました。募集人数や奨学金規模など詳細は検討中ですが、2025年夏を目途にして準備しております。
嬉しいことに山静学友会に戻って新たな出会いがありました。日本学友会の仲間との交流です。初めて参加した2023年日本学友会総会福島大会では、全国から70名余りの学友が集まっていました。学友は異口同音に今日あるのはロータリー奨学金のお陰と語って感謝の念を抱き、何かの形で報恩したいと述べていました。思うに学友は皆この一点で繋がっているのです。初めて会ったにもかかわらず、昔からの友人であったような不思議な感覚を覚えたのはそうした共通の思いがあるからでしょう。先に述べた「DG奨学生」支援をロータリーにお願いしようとする動きも、こうした全国学友会員共通の願いがベースにあったからに違いありません。
ところで、ロータリー財団は学友会をどのように位置づけているのでしょうか。ロータリー章典40.070.1.には、ロータリー学友会の活動目的として「ロータリークラブの会員のための潜在的な供給源となること。」と規定されています。奨学金プログラムを費用対効果から評価するのは憚られますが、「かながわ湘南ロータリークラブ」や「東京あけぼのロータリークラブ」など今では日本各地で奨学生が組織した多くのロータリークラブが発足しており、奨学金プログラムの成果として自ずと奨学生出身ロータリアンが育っています。
最後になります。内閣府の調査によれば、意欲があり留学を望む日本人の若者は多数いるもののこれを阻んでいるのは経済問題であることを指摘しています。また、我が国の留学生事情は中国やインドに大きく後れを取っており、グローバル社会に対応できるすべての分野の学びが求められています(参照:海外への留学者数)。
内閣府の統計に明らかなように、親の経済力には限りがありまた円安が拍車をかけている実情に鑑みて、ロータリーは援助の手を差し伸べる社会的使命があるのではないでしょうか。想い起せば、ロータリー財団が1947年に設置した最初のプログラムは、人材育成を目的とした「留学生支援プログラム」でした。今こそこうしたロータリーの理念に立ち返って、「地区補助金」やロータリーの英知を駆使して、1人でも2人でも多くの奨学生やVTTを支援していただきたいと切に願っております。