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2022年 福島訪問記

2022年 福島訪問記

投稿日: 2025-05-23エッセイ(山静学友会)

望月 昭宜(1990-1991年度・国際親善奨学生)

 2022年10月に、福島にて第11回の全国学友会総会に参加しました。
総会の翌日のエクスカーションでは、東日本大震災・原子力災害伝承館と被災した小学校の跡地を、訪問する機会に恵まれました。
実際に現地を訪問して思った事と、福島原発を建設した会社(日立_GEの合弁会社)が公開している報告書を読んでの感想に関して手短に書きたいと思います。

1.事前訓練の大切さ:
 伝承館の近くの請戸小学校は、海岸から約300mの所にあり、当然津波に襲われて被災しました。
しかし、全員が無事避難することができた奇跡の学校と呼ばれています。この小学校では、定期的に津波を想定した避難訓練をしており、当日もそれに従い避難をしたとの説明を受けました。
説明員の方は、”事前の準備・訓練”の大切さを強調しておられたのが、印象的でした。当たり前と言えば、当たり前なのですが、この“当たり前”が普通は出来ない。必ず来ると言われている、東海地震に見舞われる静岡県民としては福島から帰って、市販されている非常用の持ち出し袋を購入して、車に積んだ次第です。

2.地域の再生の困難さ:
 一度人が被災して離れると、なかなか帰るのには困難が伴う。伝承館の屋上から見た荒涼した野原は、嘗ては多くの人が住んでいた地域でした。地域振興の為の、工場施設は建設されておりましたが、往年の賑わいを取り戻すには、困難を伴うと感じました。

3.事故に関する報告書を読んで:
 福島原発を建設した会社の報告書が、ネットに公開されていたので事前に読んでみました。政府やIAEAの報告書、失敗学の提唱者である畑村元東大教授の著書等は、読んだ事はありました。しかし、”よく考えると、建設した当事者の報告書を読んだ事が無い”事に気づき、ネットで検索したのでした。筆者は直接原子力業界に勤めた事はありません。しかし、大規模な石油化学プラントに使用される、制御・計測装置の技術営業をしていた経験から、そのレポートの言わんとする事はある程度理解できました。使用されている、技術の系統が同じだからです。

 この報告書で言いたかったは事は、福島の津波というのは、”プラント全体を飲み込む規模であった(報告書のまとめから引用)”この様な事は想定していないという事です。つまり、”工場全体が、ドボンと水に浸かってしまった”のは、とても想定しきれなかったという事なのです。技術として、電気・計装品には防塵・防水規格というのはあります。この報告書には福島の機器に高い防水機能がある製品を検討したとか、使用したとかの記載は筆者が読んだ範囲ではありませんでした。本当に想定外の事であったのでしょう。

 工場全体が津波に飲み込まれても大丈夫な設計なんて、出来るのだろうか?この事を想定して工場を建設したら、採算が取れるのだろうかと考えた次第です。メーカーの肩を持つ訳ではありませんが、技術側としては流石にそこまでの設計は出来ないという事が本音かもしれません。

 福島を訪問して3年になりますが、数年の内にもう一度福島には行きたいと考えています。