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AIと気候変動

AIと気候変動

投稿日: 2025-05-29エッセイ(山静学友会)

和田 直樹(2009-2010年度・国際親善奨学生)

 みなさま、こんにちは。2009〜2010年度国際親善奨学生の和田です。
 学友インタビューの記事にも書かせていただきましたが、昨年より役所を一旦休職という形でお休みし、現在某私立大学で環境行政にまつわることを教えています。

 大学に来てまず驚いたことは、AIの活用すごいな、ということ。役所でも時代はAIということで、いろいろなことができるようになっていることは知っていましたが、実際に使うことはそれほどありませんでした。でも、大学では至る所で普通に使われていますね。AI使わずにレポート書く学生さん、どのくらいいるのでしょうか。私も自分の出した課題の回答を何度か作成させてみて、なんとなくAIの文章かどうかはわかるようになってきました。こうしてAIと”競争”をしていくことになるのです。

 さて、大学では学生と環境問題、特に最近は気候変動や生物多様性の分野での状況についてよく話をします。ちなみに生物多様性は、今注目の分野です。気候変動は、すでに上場企業の一部は対応状況の開示が義務化されていますが、次に来るのは生物多様性(最近はよく「ネイチャーポジティブ」といいます。)の情報開示だといわれています。

 気候変動に話を戻しますと、今年の年明けに衝撃的なニュースがありました。気候変動の国際目標である、「産業革命以前と比較し気温上昇を1.5℃以内に抑える」というものに対し、WMOが2024年度の地球の平均表面温度が1.55℃上昇していたと発表したのです。私が高校生の頃には京都議定書の議論が盛り上がっており、そのころは先進国が削減義務を負うという内容でした。どうやって実現するんだろう?という素朴な疑問はありつつも、国連でここまでやっているのだからきっと気候変動はうまく進むのかな、という楽観的なイメージを抱いていました。しかし、現実はそうは動いていないということのようです。

 先日たまたま学生にどう思っているのか聞く機会がありました。
私 「最近の温暖化の状況、どんなふうに感じてる?」
学生「まぁなんていうか、止まりそうにないですよね。」

 なるほどー。なんというか、現在の空気感を実にクリアに感じているなぁと感心しました。確かにアメリカが「Dig! Dig!」といっている状態で、学生がそう感じたとしても全く違和感はありません。ちなみにうちの娘が去年よく読んでいた絵本のタイトルも「Dig, Dig, Dig」でした。

 しかし、同時にふと思ったのは、私自身は幼少期と比較し気候が厳しくなったと感じていて、昔は夏はこんなに暑くなかったし、梅雨はちゃんと雨が降っていたし、台風も今ほど強くなかったように思っています。ところが、今の学生さんは東日本大震災のころに小学生で、台風15号が2019年に千葉で大停電を引き起こしたときに中学生や高校生で、毎年のように風水害が起き、夏は各地で40度超えるのが当たり前、という状況の中で育っているわけです。変化に対して危機感がないのは、普通にしていればむしろ当たり前なのかもしれません。欧州では若者が、気候変動によって将来が不安すぎて鬱になるケースもあると聞きました。それもどうかな、と思うのですが、「止まりそうにないですよね」という率直な感想に、そう思ってたら止まらないよなぁ、とも思った次第です。

 話は変わりますが、最近別の企画で、紙の利用について話す機会がありました。そこでは、自分たちの世代はどうやってもすべてをデジタルに置き換えるのは難しい、小説を読むときやメッセージカード等、どこか紙の方が良いという感覚がある。もしかしたら最初からすべてデジタルで本を読む世代が出てきたら紙がなくなる世界もあるかもしれない、というような話をしました。世代を超えないと起きない変化と、世代を超えると感じづらい変化、なかなか難しいですね。

 それなりに歳をとりよくも悪くも世間の動きに鈍感になってきたように感じますが、新しい環境で違う人の話を聞くことで、少し視野も広がるようです。ちなみにこの文章はAIには書かせていません。AIに校正をお願いしてみましたが、何か違和感のある文章になったので結局ほぼ元案のままにしました。タイトルだけは決めてなかったので拝借しました。やはり思ったほどは変化できないお年頃なのかもしれません。